91年9月の初めだった。
ティアックへ電話をして、ウエストミンスター・ロイヤルとカンタベリー15はどこへ行けば試聴出来るのか問い合わせたら、ダイナミック・オーディオ丸の内店を紹介された。
たまたま休みで遊びに来ていた友人と一緒に試聴に出かけたのだが、本命はカンタベリーだった。
アルテック・A5を下取りにだせばカンタベリー15なら何とか買えるだろうと考えていたのと、何と言ってもウエストミンスター・ロイヤルは値段が高いし大きすぎた。

ところが運命の悪戯なのだろうか?、ダイナミック・オーディオ丸の内店へ行ったらカンタベリー15は無かった。つい先日売れてしまったらしい。
しかたなくウエストミンスター・ロイヤルだけの試聴となった。
ふーん、これがタンノイのフラッグシップモデルか、と思いながら聴いていたその耳元に店員のセールストークが悪魔のように囁いた。

「展示品ですから特別お安く致します」
「ちょうど決算期ですからお買い得ですよ」
「消費税もサービスいたします」
「12月下旬のお支払いです。金利、手数料もサービス致します」
「下取りも目一杯高くお引き取り致します」
「£*@∠∽☆★・・§○●∀∂◎◇△→↑←↓〓・・・・・⊆∪∪∀∬・・?・・」

店員のセールストークは延々と続いたのだが、頭が混乱して何を言っているのか解らない。
何しろ、今買わないと損をすると言うことらしい。
気の弱い私はとうとう「それなら・・・買いましょうか」と言ってしまったのである。
その後、友人の運転する車で帰ったのだが、途中の記憶はあまりない。
頭の中は支払いと、とんでもない買い物をしてしまったのではないか、と言う思いが交錯していた。

さて、ここからがウエストミンスター・ロイヤル獲得大作戦である。
大作戦とは名ばかり、本当は日がなカタログと睨めっこして、ひたすら妻の許可が出るのを待つだけなのだ。要は根比べ。(そう言えば、どこぞの掲示板にも同じような事が書いてあったっけ)
待つこと約2週間、ついに理解有る妻からOKが出た。
この時ばかりは本当にどこの奥さんより我が女房殿が素晴らしく思えた。(イヤ、ホント、ホント)

しかしその喜びもつかの間だった。
待ちこがれたウエストミンスター・ロイヤルを初めて聴いたときのショックはそれはそれは並大抵では無かった。
どうしたことか、まともに鳴らないのだ。上はともかく下がサッパリ出ない。
「買うんじゃなかった。雑誌の評論とブランド名に騙された」と思った。
高い授業料だが仕方ない、すぐ売ろうと諦めた。
ところが、さすがは世界の名機と言われるだけのことはある。日に日に音が良くなって行くではないか。

このタンノイ・ウエストミンスター・ロイヤルとは、以後さんざん格闘し現在に至っている。
FASTのアンプで鳴らすようになって、今までのイメージとは違うタンノイの音、表情を発見した。
一関《ベイシー》のマスター、菅原氏が言うところの、タンノイ・ウエストミンスター・ロイヤルが奏でるゴージャスなジャズを日々堪能している。
勿論クラシック、特に弦の音はタンノイならではの音を聴かせてくれるのは言うまでもない。

10数年前、アキショム80に出会って以来、スピーカー10機種、プリアンプ8機種、パワーアンプ9機種、アナログプレーヤー4機種、CDプレーヤー7機種、ケーブルも悠に100万は使った。
世界最高の音が聴きたいと願った、私のこのオーディオ遍歴は、街の小さな電気屋が事も有ろうにアンプの発売元になると言う、大冒険の為の貴重な経験だったのかも知れない。
最近素直にそう思えるようになった。
でなければ理解できないほど愚然に愚然が重なり合ってFASTの発売元になったのである。
(詳しくは、「音の達人達」№005&№0013を参照されたし)
私の【オーディオ・ロマン街道】には、この次どんな【風】が吹いてくるのだろう。

何はともあれ、オーディオ・マニアと称する人で奥様を始め家族の寛大な思いやりに包まれていない人は無いはずです。
同病相哀れむオーディオ・マニアの皆さん、お互いの幸福のためにも奥様始め家族に最大の感謝をしましょう。そしてそれを行動に表しましょう!!!

 アキショム80とウエストミンスター・ロイヤル (完)

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