タイソンと言ってもプロボクサー のタイソンではない。
我が家に良く顔を出す野良猫である。
名前の由来はその風貌とご近所界隈のボス猫である事から来ている。
名付け親は例によって我が家の家内。
このタイソン、顔はお世辞にも男前(オス前?)とは言えない。おまけにとても汚い。(汚かった)
この猫が近所に住み着くようになったのは、お隣のお嬢さん”ゆりかちゃん”に気に入られたからであった。
それまでもお向かいのおそばやさんの奥さんに可愛がられ、毛並みの手入れなどして貰っていた。
物心付いた”ゆりかちゃん”がその汚い野良猫に頬ずりして可愛がるのを見て大人達は不思議がった。
ある時理由を聞いたら「タイソンは親もいない。兄弟もいない。お家もない。可哀想だよ」と、ぽつりと言った。
それを聞いた大人達は更に驚いたものだ。
なぜなら”ゆりかちゃん”は僅か生後7ヶ月で母と死別し、大好きなパパと祖父母と4人で暮らしていた。
そんな”ゆりかちゃん”がタイソンを可愛がっているのだ。もう粗末に出来ない。
そん事からタイソンは近所のみんなに可愛がられるようになったのである。
もとより人なつっこい性格の猫だったので、我が家に出入りするのに日にちは掛からなかったが、いかんせん元が野良猫である。家に居着くことは無かった。それでも具合が悪くなったり怪我をすると治るまでおとなしく我が家にいた。実にチャッカリした猫なのだ。ある時など頭に何かくっついているので取ろうとしたら何か変なのである。よくよく見れば、それはエアーで打ち込んだ釘だった。それも目の横から口の中まで貫通していた。
何という人でなしの所行か! こんな輩がやがて動物を殺し人を傷つけるようになるのだ。怒りに震えながら獣医の所へ連れていった。
しかし流石はタイソン、不死身だった。奇跡的に完治したのだ。
よく見れば愛嬌も有る【タイソン】
(最近少し衰えが見え始めた)
最近ではこんな事もあった。
ついにタイソンも死んだのか?
サッパリ顔を見せないので心配していたら、お隣の池上温泉に来るお客さんが、自販機の所で寝ていたタイソンを見て病気で行き倒れた(猫の行き倒れ?)のだと思い病院に入院させたらしい。
費用もかなり掛かったはずである。よほど動物好きの人なのだろう。
一週間ほどしたらタイソンは何事もなかったかのように近くを徘徊し始めた。
世間では自分の子さえ殺す親がいるというのに、何と”運の良い野良猫”なんだろう。
殺伐とした世の中ではあるが、我が西蒲田界隈の住人は心優しき人達で一杯である。