随分と春めいてきたと思ったらいつの間にか近くの公園もまさに桜花爛漫の様相である。
四季を彩る花の中で桜ほど日本人の心を捕らえて離さないものもないだろう。
咲くべき時にパッと咲き、潔く散っていく様が日本人の心にしみるのだろうか。

桜は待つ間も心弾む。
つぼみも良い。
爛漫たる満開はさらに素晴らしい。
はらはらと散る様もまた美しい。
葉桜の緑は目にまぶしい。
桜、桜、何と不思議な花、不思議な木なのだろう。

散る桜
残る桜も
散る桜。

出来れば今年の桜をゆっくり眺めて欲しかった人がいた。
島田研究所の故島田貴光先生である。
一昨年の真空管オーディオフェアーで、島田先生のイベント中用意してあった他社のアンプが急に不調になり、急遽FASTのT1−Xを使って頂いたのがご縁で、初めてお話をさせて頂き、同じ九州出身と言うことで随分かわいがって頂いた。
オーディオアクセサリー105号、106号を読まれた読者は島田先生の隣で一緒に写真に収まっている私を見て不思議に思われた方がいるかも知れないが、あの時島田先生がFASTを試聴機に選ばれたのは、きっと真空管オーディオフェアーの時のお礼の気持だったのだろうと察している。
先生のさりげなさが本当に嬉しかった。

九州男児と言えば、先生の生き方もそうだったのではないだろうか。多くの方が承知のように、先生はオーディオの草分け的な方であり、東芝オーレッスの総帥でもあられた方である。
本来私なんぞ気軽にお話しできない遠い存在の方なのだが、決して偉ぶることのない方だった。上に諂わず、下を侮らず、質実剛毅たる、まさに九州男児であったと思う。

あれは何回目に先生の自宅を訪れたときだったろうか。よほど体調が良かったのだろう。自他共に認める先生の弟子O氏と一緒に少しお酒をのんだ。完全に体調が戻ったら今度はゆっくり呑もうと仰ったが、ついに叶うことはなかった。日本中が俗世間の嫌なところだけが目立つ世相の中、本当に惜しい方が亡くなった。

浅深の
想いも行き交う
音街道    (字余り)

故島田貴光先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。

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