久々に一気に読める本と巡り会った。
さだまさし、名前を聞くだけで何となくほのぼのとする。
フォークソング華やかなりし頃、彗星のごとく現れ、そのユニークさと、えもいわれぬウィイットと、独特の暖かい雰囲気で、アッという間に日本のフォークソング界を席巻してしまった。
最初に聞いたのはラジオから流れてきた「雨宿り」だった。
今まで聞いたこともない、不思議な、そして暖かさに溢れ、思わず笑える歌だった。
その後「関白宣言」「防人の詩」と立て続けに大ヒットした頃が懐かしい。
次に印象に残っているのが「転宅」と言う曲で、父が事業に破れ、狭い貸家に引っ越したとき、祖母が父に一言「お前、このまま終わるつもりじゃないよね」、と言い、何年か後、事業を盛り返して大きな家に越した時、一番喜ぶはずだった祖母はもういなかった。そんな歌だった。
ああ、この人は素晴らしい家族愛にはぐくまれ育った人なんだな〜、心の優しい人なんだな〜、だからこんなほのぼのとした歌が歌えるんだな〜、と感じたのを覚えている。
以来、私は「隠れ さだまさしファン」である。
何故隠れファンかというと、コンサートも一度も行ったことがない。
CDも10年くらい前に買った1枚しか持っていない。
チケットを買っても忙しさにかまけて行かない。
今回もそうだった。
前に妻から、「さだまさしのコンサート行く?」と言われ、「ん、行こう!」と言ったのだが、当日もとうとう行けなかった。
仕方なく知り合いと一緒にコンサートへ行った妻が買ってきたのが件の【精霊流し】だった。
翌日定休日だったのでいつもよりゆっくり起きて、ふとテーブルの上を見ると面白そうな本が置いてある。
何気なくパラパラとめっくたのがいけなかった。(いや、本当のところは良かった)
もう後は一気呵成に読み進み、夜中に読み終わった。
さだまさしに一言いたい。
こんな素晴らしい本を出してはいけません。
ここに一人、せっかくの定休日をフイにしてしまった被害者が出ました・・・・・・・と言いつつ、まだ感動の涙が止まらない。いや、本当に参った。
家族愛と言う意味では、9年前発売されたユン・チアンの「ワイルド・スワン」以来の感動を受けた。
文化大革命の中で翻弄される家族とその愛情が全編を貫いている。
特に泣けるのが第24章P266(下巻)を中心とした母との別れである。
ドライに「親に世話になったことはない!」とか「私たちの生活設計の邪魔はしないで!」などと言い放つ人には決して理解できない情愛の世界なのかも知れない。
ともあれこの「精霊流し」は素晴らしい本である。
読書好きの方にお薦めしたい。