[ 私が出会った音の達人たち ] 2001年6月8日
97年1月24日の事だった。
小雨がぱらつく夕方、何となく陰のある男性がフラリと当店に現れ、店頭に置いてあったタンノイのウエストミンスター・ロイヤルを見て『これは売り物ですか?』と聞いてきた。
『エージングをかねて店頭に置いてるんです』と言うと、少しがっかりした様子だった。
色々話話してみると、大のオーディオファンで、アンプでも何でも自作する音キチだとの事。
そして、陰がある雰囲気とは裏腹に笑顔がとても人なつっこいのである。これがT君との出会いだった。
元々が音キチ同士である。たちまち意気投合してその日の内に彼の家を訊ね、音も聴かせて貰った。ところがその音が、想像より遙かに素晴らしく本当にビックリしてしまった。
当時私が使っていた、国産の有名なアンプなど足元にも及ばない。
駆動力と言い、情報量と言い、粒だちと言い、その艶やかさや雰囲気は初めて経験する音だった。
すっかりその音にはまってしまった私に、『作ったのは私ですが、回路を設計した人は、日本で初めての、PA用ミキサーとアンプを作った人で、メーカーや放送局、スタジオ等から色んな機器製作や開発を依頼される凄い技術者です』と教えてくれた。(ミキサー製作については、MJ74年4月号、P143−147に掲載、アンプはタイプⅣがMJ87年9月号、P128−132に掲載)
私から見たらT君さえかなりの凄腕なのに、その彼が絶賛しまくる技術者菅原さんは,まるで《神様》みたいな人に思えた。(その頃、選り優れた名人達人の事を、〇〇の神様と言うのが流行っていた)
そして『そんな凄い人のアンプだったら売り出すと面白いだろうね』と言う何気ない私の一言が菅原さんと私を巡り逢わせ、あげくに私がFASTの発売元にまでなろうとは、その時知る由もなかった。
T君が私の言葉を菅原さんにどう伝えたのか解らないのだが、菅原さんは『その話乗った』と言ったそうである。
こうしてお互いに顔も見ない内に、しかも当事者の私も知らないところで、製造元 (株)ファスト、発売元 出水電器 は決まったのである。 T君と知り合って僅か数日後の不思議な出来事であった。
いまだに、あの一連の巡り逢いは《神様の戯れ?》だったとしか思えない。
発売元はいいとして、いくら私が無謀でもいきなり発売というわけには行かない。
T君と出会って1週間後の2月1日(何という展開の早さだろう)、プロ機 タイプⅤを借りるためT君と一緒に(株)ファストを訪ねた。
菅原さんは貸出用アンプのデータも用意して待っていてくれた。
初めて会った菅原さんは『この人は出来る』と言う強烈な第一印象と、驚くほど謙虚な人だった事を今でも鮮やかに思い出す。
その日、FASTのアンプ・タイプⅤを持参し相談に伺ったのが鹿沼市の斎藤さんだった。
斎藤さんは両手をあげて賛成し、特注のアンプまで注文してくれた。(斎藤さんについては№005を参照)
こうして、街の小さな電気屋がアンプの発売元になると言う、前代未聞(?)の大冒険が始まった。
第1号の製品もでき、さてどう売り出そうかと思っているところへ、T君が1枚の広告を持って来た。
それが、第3回真空管オーディオ・フェアーの案内で、クラフト・オーディオ賞を新設すると書いてある。
T君は『出してみたらどうですか?、賞は取れますよ!』と言った。
菅原さんにその事を話すと『大丈夫でしょう』との返事だったので『クラフト・オーディオ賞は私たちが取ります』と宣言して第3回真空管オーディオ・フェアーに参加した。
第3回真空管オーディオ・フェアーではC10がクラフト・オーディオ賞、金賞に輝き、以後4回連続受賞している。
第5回真空管オーディオ・フェアーではM300も特別賞を受賞することが出来た。
話が前後してしまったが、T君は突然私たちの前から姿を隠し、そしてまた不意に現れたりする。
第5回の時はタンンイ・マーキュリー2を見つけて来た。
第6回の時はビクター・SX500ドルチェを持って来た。
(いずれも真空管オーディオ・フェアーのブースで使用し、FASTの実力を遺憾なく発揮してくれたスピーカー)
第7回も近くなったが、T君は今度は何を持って現れるのだろうか?それとも現れないのだろうか?
この頃の事では面白い話がいっぱいあるのだが、またいつの日か機会を見て書きたいと思う。
それにしても、このT君との出会いがなければ、T1−Xも、C10II も、M300II も、
そしてFAST発売元 出水電器も存在していない。
何とも不思議な男、T君である。
[ 私が出会った音の達人たち ] 2001年6月2日
5月8日午前、足利のHさんという方から、『試聴に行きたい』と電話がきたと、携帯に連絡があった。
そして午後1時頃、『今蒲田ですが、どう行けばいいんですか?』と問い合わせがあったのだが、それが関西弁なのだ。
しばらくして当店の前に外車が止った。ナンバーは神戸である。
足利、関西弁、神戸ナンバーの外車、ん?なんだ?
車からはご夫婦とおぼしきお二人が降りられた。
前置きが長くなったが、これがケーブル製作者、きささんご夫妻との出会いであった。
お話を伺うまで知らなかったのだが、某HPにも時々載っている方で、近頃噂の人である。
また、きささんはHPでケーブルを発表し販売もされているのだが、数が少なくなかなか手に入らないらしい。
当日は、栃木県足利の個性派ショップ、アレックスで試聴してから当店へ来られたそうだ。
試聴には自作のケーブル 【銅蛇】 暫定価格¥10.000− も持参された。いろんなCDを聴いてから、【銅蛇】の試聴となった。
本当のことを言うと、そんな大したこと無いだろうと思っていた。
しかし出てきた音は私の予想とはだいぶ違っていて、実に癖のない艶やかないい音である。
もしこれが定価10.000−で出回ったらみんなビックリすると思う。こういう商品は、有名メーカーで高額商品であればいい音が出ると思っている、ブランド志向の人には縁のない商品だが、巡り会った人にとっては何物にも代え難い宝物だと思う。
やはり、本当にいい音を手に入れるには、自分の足で探し、自分の耳で確認する以外に方法はない。それから、当店のアンプFASTとウェストミンスター・ロイヤルの音も、『想像していたより、かなりいい音だ』とお褒めを頂いた事も書き添えたい。
※ きささんは《波導》とか《気功》とか、いろいろとやられるらしいのだが私はその方面は全く解らない。
しかしケーブルは本当に良かった。
次はFAST製作者、菅原氏と私との運命的な出会いのきっかけとなったT君の話。
[ 私が出会った音の達人たち ] 2001年5月27日
A&V village をお読みの方は広島ASC(主催 山本紘市氏)の事はご存じだと思う。
神戸氏はASCのスーパーマニアの一人として有名な人で、A&V village 47号 P136でも紹介されている。で、その神戸氏が何故出水電器に試聴に来られたのかと言うと、おなじ A&V village 47号 P160で紹介されたFASTの記事を読んで『いくらFASTのアンプが凄くても、ウエストミンスター・ロイヤルがビシッと鳴るわけがない』と、信じられなかったそうである。
そして今度、上京するにあたり、試聴訪問候補の1つにあげられたのが当店だった。
5月22日、JR蒲田駅で待ち合わたのだが、神戸氏がとても若かったのは以外だった。(40才前)駅から当店までの5.6分の間、車の中で色々お伺いしたのだが、ともかく熱心というか真剣というかオーディオまっしぐらな方である。(久々に熱いオーディオマニアと出会った)
試聴の間も背筋をピシッと伸ばし、目をつむり、まるで若き修行僧と言った感じであった。
持参されたCDや当店推薦CD、LPレコード等、2時間程聴いて頂いた。
『記事は本当だったんですね。いや驚きました』と言われ、そろそろ試聴も終わろうかと言う時、たまたま仕事の帰りに立ち寄られたIさんのアルッテク604に話が及び、神戸さんも604には思い入れがあるとかで、どうしても聴きたいと言われ、みんなでI氏宅へ伺った。(I氏については №002 を参照)さて、そのI宅での試聴。
604は畳の上に直置き、アンプ類のラックも凝った物でなく、10年ほど前の5万円位いのCDプレーヤーとC10II、M300II で鳴らすアルッテク604は信じられないほどいい音で鳴っていた。
音がきめ細かく、艶もあり、メリハリもあり、上から下まできれいに伸びた何とも言えないいい音なのである。
神戸氏曰く『これは素晴らしい!、出水電器のウエストミンスター・ロイヤルよりこちらの方がいい』だって。
確かに、確かに604はいい音で鳴っていた。しかし、私の立場は一体どうなるんでしょうか???
(悔しいことに、この604は当店にあった時はこんないい音では鳴らなかった)
その後の話題はもっぱら、Iさんのアルッテク604だったのだ。
書きたいことはいっぱいあるがこの辺で。 神戸氏のHP(参考になる記事、楽しい記事がいっぱい!) 音楽のページ
この次は今話題のケーブル製作者、きさ様(HPネーム)ご夫妻が来店された時のこと書こうと思う。
[ 私が出会った音の達人たち ] 2001年5月9日
オーディオ全盛期を知る年代の私達にとって、長引く不況も重なり冬の時代とも言われる最近のピュアオーディオの衰退ぶりは何とも寂しい限りではあるが、それでも全く希望がないわけではない。
私はかねてより、オーディオ業界が女性ファン獲得の努力を怠って来た事も大きな要因であると思っているが、嬉しいことに最近のオーディオフェアーやオーディオショップではカップルで来られる方が多くなっている。
これらの女性ファンこそオーディオ業界不振の救いの女神ではないだろうか?私にはそう思えてならない。《全ての芸術は音楽に収れんされる》とはかのニーチェの言葉であるが、もし家族が芸術の中の芸術と言われる音楽を、趣味として共有出来たらどんなにか素晴らしいだろう。考えるだけでもワクワクする。
キングオブザホビーと言われるオーディオがもっともっと受け入れられる21世紀にしたい。
思い当たりませんか、奥様や家族の無理解でどれほど多くののオーディオファンが涙に暮れているか!!!
オーディオ業界もオーディオファンも、お互いの幸福のためにドンドン女性ファンを増やしましょう。
そんなわけで今回は、熱烈なオーディオファンのN様ご夫妻の話。
自宅試聴を申し込まれたNさん宅へ電話をしたら、あいにくご主人はお出掛けとのことなので、電話があったことをお伝え下さいと言ったところ、
『私が伺いますが・・・』
『???!≠☆§£◎?∀∂¶ξЙЮё??・・・・・』
『あのー・・・・・、奥様もオーディオファンなのでしょうか?』
『ハイ!』
『そうなんですか!』
『エェ!』
私は一瞬とまどい、驚き、そして、『ああ、こちらはご夫妻ともオーディオファンなのだ』と嬉しくなった。
試聴当日、連絡いただいた住所はコンクリート打ちっ放しで、大きなガラスが壁になったお洒落な家だった。
しかし、通された部屋にはスピーカーも何も見あたらない。
そしておもむろに開けられた壁一面の扉の中からは、カンタベリー15が現れた。もちろんカンタベリー15はコンクリートの床に置かれていて、アンプ類も頑丈な棚に置かれ、電源も専用回路とかなりのマニアである。
(専用回路に関しては、出水電器特製?回路を追加して更に音質が向上した。)
N様ご夫妻は建築の設計及びデザイナーで、このお洒落なお家もN様ご夫妻のデザイン&設計だそうだ。
3時間以上にわたる試聴はとてもいい雰囲気の内に終わり、アンプも気に入って頂けたようだった。
そして2日後にはC10II とM300II のご注文を頂いた。
納品後しばらくして感想のメールを頂いたのでそれを紹介したい。
尚、ご主人様はとても無口な方なので、奥様のご感想を要約すれば次の取りになる。その後FASTのおかげで、今まで聞こえなかった音を聴いたり、何と言っても不愉快さや、
物足りなさが無くなり満足しています。
(ご主人もとてもご満足の様子)
以前、何百万円もするアンプとCDの組合わせで聴いた時の鳥肌が立つ
あの感触がまた味わえることができホントうれしいです。
セット価格を考えると、奇跡に近いですよね。きっと。
それよりも、
やっぱり驚いたことは、音量を上げたときの和太鼓の音!
床を這って押し寄せる音の波!
音を物体として体感したのは初めてです。
他のシステムでは考えられないですよね。
それから、デザインや内部もシンプルできれいです。
フロントパネルの色も実に微妙ないい色で気に入ってます。
音は勿論のこと、本職のデザイナーからアンプのデザインを誉められたことはとても嬉しい出来事だった。
FASTを熱烈に支持していただいているファンの皆様の為にも尚一層の努力を決意している昨今である。
[ 私が出会った音の達人たち ] 2001年4月7日
満天星とはどうだんつつじの事だそうだ。
その名前が付けられた[ロッジ満天星]は蓼科中央高原にある。
オーナーの小林様ご夫妻は大のオーディオファンで、インフィニティー愛好家の中ではかなり知られた人らしい。
その小林さんが気になってしょうがなかったのが、MJ誌やAA誌のFAST紹介記事と広告だった。
聞いたこともない名前だし、どう考えても弱小メーカーとしか思えない。
「雑誌社が提灯持ちをするほどの金も力も無さそうだし・・・・・ん〜、こうなったら自分で試聴
するしかない」と、00年4月14日当店に試聴に来られた。
小林さんはタンノイの音は高域に不満があるとかであまり好きではないそうである。
しかし、「アンプの方は実に興味を掻き立てられる」と言われ、自宅試聴を希望された。
数日後、試聴機が届きセッティングが済んで音出しをしたとたん「貴方、支払いはどうしようか?」と、キッチン
でお仕事をされていた奥様が間髪を入れず言われたそうである。
後の話は早かった。
FASTのアンプを購入された人はどうも音キチの血が騒ぐらしい。
PMCのBB5にされたFさん、
ウイルソン、システム5にされたFさん、
安いコンポーネントからアルテック604にされたIさん、
B&W801を買いそうな気配のSさん
KEFの上位機種を検討中のKさん
海外で500万円かけて特注のスピーカーを作られたKさん、
80人が楽に入れ、生演奏が出来るスタジオを自宅に作ってしまったTさん、
などなど、凄い人たちばかりである。
そして又一人、小林さんだが、どうしてもトップモデルのスピーカー(正確にはもう一つ上があるそうだ)が
欲しくなり、とうとうインフィニティーβに変えてしまわれた。
全てこの半年以内の、しかも私が知る範囲の出来事である。
さてその小林さんの音とテクニックだが、最もに目に付くのは分厚いコーリアンボードを使ったラックである。
振動が音の大敵であることは少しオーディオをやった人なら知っているが、このコーリアンボードは制震に
大きな威力を発揮し、音を艶やかにして奥行きを出してくれる。但しそれも使う人の腕次第で変わるのは
言うまでもない。そして信濃CSE電源、ケーブル等かなり気合いが入っている。
FASTのプリC10II と、カウンターポイントNPA&FASTM300II (低音用)のバイアンプで鳴らす
インフィニティーβがどんな音がするか、実は私もまだ聴いていない。
しかし、前のインフィニティーγの音から察するに、高域はあくまでも繊細に、中域は艶やかに張りのある音で
低域は太く輪郭のはっきりした音だと思われる。
ご本人の言葉を借りれば「素直でワイドレンジ、少しだけ柔らかい音になっているつもり」だそうです。
あと、音の傾向と好みについてはご夫妻の昨年度推薦CDからご想像願いたい。
小林様推薦 サンサーンス動物の謝肉祭 ERATO 0630−18971−2
奥様推薦 マンハイム楽派の黄金時代 WPCS−10549
(準特選) コンチェルトケルン演奏
番外推薦 綾戸智絵 曲集
少しだけロッジ満天星のことを書きたい。
食堂兼談話室に置いてあるオーディオは宿泊客の誰でも聴かせてもらえる。
お気に入りのCD又はレコード持参で行けばなお楽しいだろう。
それに奥様手作りの家庭料理と四季折々の山菜料理やハイキング、スキーなどオーナー手作りのイベントと
ガイドがいっぱいあります。
また、さりげない会話にオーナーご夫妻の人柄やその深さが感じられとても楽しいですよ。
興味がある方はHP ロッジ満天星 をクリックして下さい。
HPにはオーディオのコーナーも新設される予定だそうです。
8月14日追加
先日、ロッジ満天星におじゃましましてきました。
噂に違わずインフィニティβは凄かった。
洗練された高域、分離の良い中域、分割された低域用のスピーカー,全体がとてもきれいにまとまった、
とにかくいい音なのである。
それにウッドの仕上げが実に見事なスピーカーで、見ていて惚れ惚れしてしまう。
オーデイオ・マニアの人なら、1度は聴いて見たいオーディオ・システムである。
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