(有)出水電器 島元のブログ

2008年5月の記事

理想を追い求め続ける熱きオーディオファン、惣野さん。

[ 電源工事 | 私が出会った音の達人たち ]   2008年5月25日

惣野邸の超豪壮なシステム。

[ なかなかお目にかかれないハイエンドシステム。現在はもっと凄いことになっている]

 [最新のシステムについては、当コラムの09年5月2日を参照]

 

05年7月初め、ある方の紹介で伺ったのが惣野邸だった。40畳のオーディオルームに通されて目にしたシステムは、今まで見たことも無いほど、”豪壮”という言葉がピッタリの凄いシステムだった。

惣野さんは(有)出水電器の電源工事を希望され、その日は見積もりの為に初めて現場調査に伺ったのだが、ここまでのシステムとなると、かなりの時間と手間を掛けて調整が行われているはずである。 聴かせて頂いた音は文句なしの超一流の”音楽”だった。このシステムが電源工事をやってどう変化するのか。正直言って期待半分、不安半分だった。

今までにも全国を回って、いわゆるハイエンドシステムはいくらでも見てきたが、これほど圧倒されるシステムとなると別である。まずめったにお目にかかれない。この電源工事は少しの失敗も許されない。真剣勝負だ。

惣野さんの要望は、全て200Vの10回路、それも隣の部屋から配線し、オーディオルームの壁などは一切傷つけない隠蔽配線が希望。だがこれは難しい。幹線はともかく、専用回路はCVの8スケアーが基本だが、それを10本隠蔽でなると果たして可能かどうか。やり始めて途中で「すみません出来ません」、とはいかない。

1週間ほど時間をもらって私が提案した工事方法は 、一番ストレートに最短距離で配線するルートだった。つまりメーター横の既存配電盤内で家庭用と、オーディオ専用分電盤に幹線を分岐し、外壁を回してオーディオシステムの正面、最下部に専用分電盤を設置し、200Vを顧慮して5.5スケアーの専用回路とすることだった。

この時の工事の様子と内容は、ステレオ、2005年9月号 に6ページを使って紹介されている。また惣野さんの友人のHPでも詳しく紹介されている。(惣野邸電源工事で検索出来ます)

肝心の惣野さんの工事後の感想だが、まず、音のグレードが間違いなくワンランク以上あがった。S/N比が上がり静寂間が増した。奥行き感が出た。今まで解らなかった、各ニット間の音のつながりもハッキリ解る等々。ともかく大満足の様子であった。

だが、惣野さんの音の追及はそんなものでは収まらなかった。なんといっても、8年間のニューヨーク駐在中には、ジャズが演奏されている所で行かなかったところは無い、という程の大のジャズファンであり、かのマークレビンソンとも特注製品を作ってもらうほどの友人なのだとか。そういえばハイエンドマニアの垂涎の的、ビオラの特注チャンネルデバイダも最初に作ってもらったのも惣野さんなのだ。最新号のオーディオアクセサリー2008年夏号のP302~303でも紹介されている通り、惣野さんのシステムは年々発展し、現在はさらに凄いことになっている。

そんな惣野さんが目指す究極の音とは、大好きな女性ボーカリストが目の前で、手を伸ばせば触れられそうな再生音だそうである。頼まれていることもあるし、近いうちにまた尋ねて、最新の惣野サウンドを聴きたいと思っている。惣野さんも必ず伊豆の試聴室を訪ねてくれるといっていた。

試聴室移転、そしてALLION 開発-7(Fin.)

[ オーディオロマン街道 ]   2008年5月24日

究極のプリメインを目指した ALLION Ultimate T-125sv

[ ALLION 第二弾  ALLIOON Ultimate T-125sv ]

 

コストの関係でALLION Ultimate T-100で見送らざるを得なかった様々なパーツとアイデアを、そのまま捨て去るには悔いが残った。例えば、音質的には圧倒的に有利な200V切り替え式の電源、音質劣化の要因となるヒューズを排したブレーカースイッチ、試作機で用意して在庫もいっぱい抱えた高級パーツ、出川式電源のバージョンアップとフル装備、さらに回路の見直し等々。

これらを装備すれば、ロッキーマウンテン・オーディオフェストで大好評を博した試作機に並ぶ性能を誇る、究極とも言えるプリメインアンプが出来るはずである。

これは意外と早く実現する運びとなった。 なぜなら、ALLION Ultimate T-100を購入された約半数の方が200V仕様を希望され、200Vが欲しいけど我が家は200V専用回路の環境に無いなどの理由で購入を見送られる方も数多く見られた。これは早急に100V200V切り替え方式の製品をリリースしなければならないと気が急かされた。

そして、この5月新たに製品化されたのがALLION Ultimate T-125svである。その特徴は前に述べたように次の6点に集約される。

  ALLION Ultimate T-125svの特徴

  • 出力を125W/ch(8Ω)にアップ。
  • 音質重視のPRE DIRECT入力を採用。
  • 100V200V切り替え可能の特注トランスを採用。
  • 高級電解コンデンサーを採用し、さらに部品を厳選。
  • 音質劣化の原因となるヒューズを排除し、ブレーカースイッチを採用。
  • 回路の見直しと、出川式電源の全体的バージョンアップにより、S/N比を改善。

つい先日(5月21日)発売された 、オーディオアクセサリー №129 夏号、P168 では次のような評価を頂いている。

(中略:出水電器は)「無名ブランドは品質で他を圧倒しなければ生き残れない」と死活をかけた勝負に出ている。パーツ類は、高品質のコンデンサーや特注トランスを採用し、出川式電源をフル装備する。

また極めて画期的なポイントは100Vと200Vに切り替えができること。(中略) さらにT-125svはヒューズを使っていない。(注:ブレーカー方式)(中略)

自宅で試聴してみて、とにかく「聴いた感じがする」アンプだと思った。余裕綽々で一気にスピーカーをねじ伏せ、そこに色濃い実在感を漂わせる。しかも 力業だけでなく、きめが細かく、アコースティック楽器など余韻の消え際が美しい。微細な表現にこだわるゆえのパーツ厳選、これが結実しているように思え た。(記事抜粋)

また、オーディオベーシックでも好評を頂き、その記事が6月初めに発売の夏号に掲載されるので、その際はまた追加して書き込みの予定。

 

【ご挨拶】

開発及び制作依頼先の皆様を初め、様々なかたがたのご協力を頂き、ALLIONもスタートを切ることが出来ました。皆様方に深く感謝する次第です。

ALLIONの紹介と、当ブログをお読みいただければ、ALLIONのアンプ開発の背景とその思想をご理解いただけるものと思います。 弊社は小さなハンドメイドのメーカーではありますが、オーディオファンの 皆様のより良いオーディオライフに資する為にさらに努力をして参る所存です。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

試聴室移転、そしてALLION 開発 -6

[ オーディオロマン街道 ]   2008年5月24日

ALLION  Ultimate T-100

[ 1年半の開発期間を経て誕生した ALLION Ultimate T-100 ]

 

本日は、ありがとうございました。居心地が良く、ついつい長居をしてしまいました。
異次元の世界で、思わず引き込まれてしまいました。
「トリプルコンチェルト」の大好きな旋律部分では、思わず鳥肌が立ちました。こんな体験は初めてです。
「冬」の、透明で凍てついた感じもゾクゾクしました。

当日、Tさんからは上記のような感想のメールを頂いた。しかしALLION Ultimate T-100 での再生では、TさんのCD(クラシックの有名なレーベル)からは時々高音が かなりきつく聞こえて,C-100, M-600ではそれが軽減されていたのが気になる。これはどうしても原因を究明しなければならない。

では、なぜ耳の良い村井先生や田中先生の試聴で気がつかなかったのか?この答えは簡単だ。優秀録音として知られる、またはテストCDとして常時使用しているCDではそのようなきつい音はまず無い。

しかし、これだけで説明がつかないのが、C-100、M-600ではそれほどまできつく感じなかった事だ。C-100、M-600との違いは何か?、パワーの差だけとは思えない。むしろ高域に限れば勝っている部分もある。悩みは10日ほど続いた。色々考えてみたら、決定的に違うところ(と思えるところ)は出川式平滑回路に使用しているショットキーダイオードしか思い当たらない。だがそれさえも、設計段階ではA&R社でも十分と言っていたし・・・・・。こうなれば実際に部品を交換して確認する以外にない。

さて、件のショットキーダイオードを交換した後の音である。これが何ともあっさり解決したのだ。当試聴室に来られた他の方が持参されたCDでも同じ事があった。どうやら日本でもてはやされるCDの中には高域のきついCDが多く含まれているらしい。その原因は現状の電源がノイズだらけで、その結果特に高域が失われやすい傾向とあいまって、それを補う形でこのような録音が重宝されるのだろう。これを嘘と思われる方に提案したい。電気屋さんに頼んで、ご自宅の分電盤のブレーカー二次側(コンセント等の負荷側) のFケールを全てツイストしてみて貰いたい。たったこれだけでも驚くほど高域が伸び、低域も変な膨らみもなくなりスッキリと伸びきった低域になるはずだ。つまり、普段いかに高低域が詰まった音を聴いているかと言う事に気づかれると思う。

ついつい講釈が長くなってしまったが、このTさんの”事件”が無ければ ALLION Ultimate T-100も、T-125svも、ここまで高い完成度を誇ることも、ここまで自信を持って販売に望む事も出来なかったと思う。Tさんには心から感謝している。

ともかく私の懸念事項は 解決された。しかしそれ以上に深刻な問題が”コ・ス・ト・アッ・プ”である。製作依頼先からは「私の方は1円単位のコストダウンを一生懸命やっているのに、トランスより高い部品がさらに倍近くになるなんて・・・。島元さん、貴方は商売をする気があるんですか?」、「ハイ、勿論」なんて言えるような状況ではない。「申し訳ないけれど、我が儘を通させて欲しい」としか言いようが無かった。

こうして理想の音を求め、1年半の開発期間を費やしたALLION Ultimate T-100は完全に出来上がった。利益率の事さえのぞけば、私の心は晴れ晴れとしていた。そして私の胸中には次の企画が沸々とわき始めていた。

試聴室移転、そしてALLION 開発 -5

[ オーディオロマン街道 ]   2008年5月23日

様々な工夫とアイディアが詰め込まれたALLION  Ultimate T-100の内部

[ 巨大トランスを初め、コスト度外視となった ALLION Ultimate T-100 の内部 ]

 

忘れもしない10月20日、最初に ALLION Ultimate T-100 を取材して頂いたのは、FASTの時から大変お世話になっていた村井裕弥先生だった。

最後まで気になっていたこと、それは私の音の好みと制作依頼先の技術者の音の好みが違っていて、私も少し迷っていた。そこで当日は両方を聴けるように準備をし、最初に技術者の好みの音を聴いて貰ったが、どうも反応がパッとしない。試作を聴いて貰った時との違いにとまどっている様子だった。そこで次に私の好みの音の出番なのだが、これは上蓋を取り外し、ある箇所のリード線を切り、電解コンデンサーの比率を変えるだけなのだ。しかしそれによる違いが実は大変大きい。そして村井先生が選んだのは私の好みの音の方だった。(雑誌記事の紹介 STEREO  2007年12月号参照)

これでもう怖いものはない。次に取材して頂いたのは田中伊佐資先生だった。一緒に来られたオーディオアクセサリー副編集長の中野要氏と一緒に試聴して頂いたが、お二人とも身じろぎもしないで聴き入っておられ、かなり驚かれた様子だった。その時の驚き、興奮の様子はオーディオアクセサリー 2007年冬号、P154に詳しく書かれている。

このまま全てがうまくいくと確信した矢先のこと。ALLION Ultimate T-100開発において、さらなる音質改善のキーマン、Tさんが登場するのである。

取材が一段落した後、引っ越して最初にお知り合いになったお隣のTさんご夫妻がCD持参で来訪された。前々から一度”いい音”を聴いてみたいと仰っていて、お互いの都合が合ったのがこの日だった。Tさんは音楽にもオーディオにも造形が深いようで、名曲や銘機の名前もさりげなく話される。この日持参されたのがベートーベンのピアノ協奏曲。

最初にかけたのはもちろんALLION Ultimate T-100で、一緒に頷きながら聴き入っていた。しかし途中から気になる部分が出てきて、私の心中は穏やかではなっかったが、Tさんはさして気にもされていない様子。そこで、「こちらも聞いてみましょうか」と、C100、M600に切り替えた。価格の差9倍、パワーの差が6倍。当然ながらこちらの方が余裕に溢れた音楽を奏でくれた。だが、私の関心はそんなところにはない、そして懸念していたことが的中した。

試聴室移転、そしてALLION 開発 -4

[ オーディオロマン街道 ]   2008年5月22日

現在の試聴室

[ 試聴室(ここは仮で、最終的な試聴室はまだ先になりそう・・・) ]

 

何回もの変更をへて出来上がった試作機だったが、原価計算をすると販売価格がゆうに80万円を越してしまう。この試作機は同月アメリカのデンバーで開催された、アメリカ最大のオーディオフェアー、ロッキーマウンテンオーディオフェスタにおいて、スピーカーメーカーのフィーストレックス社のデモ用として使用され、現地で2万ドルの真空管アンプを一蹴し、有名な評論家のHPにも掲載された。(フィーストレックス社技術部長、寺本氏談)

いくら音が良いとはいえ、どう考えても新参ブランドのプリメインとしてはリスクが大きい。知り合いの販売店の方などに聞いても同じ意見だった。さんざん考えたあげくたどり着いた結論は、品質(音)を落とさずにコストダウンし、30万円で販売するという、とんでもない目標設定だった。

そんな事が簡単にできるはずがない。当然ながら開発依頼先からは猛反発を喰った。

・     「究極のプリメインが目標だったんでしょう?」
・     「ちょっとそれは・・・・」
・     「出来るわけがないでしょう・・・」

返す言葉がない。全く言われるとおりだ。
最高の音は欲しい、値段は安くなんて、誰が考えても虫が良すぎる。

だがしかし、売れなければ究極もヘチマもない。今までの努力も全て水泡に帰してしまう。
無名ブランドは他を圧倒する品質でなければ売れないし、生き残ることも出来ない。
これは10年以上のFAST販売元として、イヤと言うほど経験してきたことである。
これまでにも、どれほど有名無名のメーカーが生まれては消えてきたことか。
しかも、あるデータによれば、どんなに良い製品でもヒットする確率は5%しかないという。

この後様々なやりとりがあって、結論から言うと回路はそのままにして(実は開発費用も時間もなかった)、何とかコストダウンに挑戦して見よう言うことになったが、どう考えても部品だけで対応出来るコストダウンの幅ではなかった。究極の選択は直販(現在は限定的に取り扱って頂いている)、税込み346,000円の定価販売と言うことになり、再度開発をして貰うことになった。この間の事は、とてもとても簡単に言葉や文章では表せない。依頼先とスタッフの方々には心身共に大変な苦労と負担をお掛けしたのだった。どう御礼を言ったものか言葉さえ見つからないほどで、心の底から感謝!大感謝!である。

そして昨年10月、待望の新製品 ALLION Ultimate T-100 が出来上がった。記念すべき ALLIONNのデビュー作誕生だ。

このあと何社かの雑誌取材が待っていたが、私には一つだけ気になっていたことがあった。


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